ブルーレディが選ぶ平井和正の傑作SF作品・ベスト10(平井和正追悼企画)

hirai

平井和正が亡くなって1年経ちました。
今では、心の中にしか存在を感じることが出来ません。

ただ、時々出てくる電子書籍に懐かしさがあります。
周辺の作家によるリメイクには全く興味がわきません。
平井和正の名前を冠した派生作品を時々手に取ってしまいますが、論外のお粗末さに辟易しています。

そんな私が平井和正への想いを込めて、傑作作品の中からベスト10を選んでみることにします。
なかなか再読できないので、記憶違いもあるかもしれませんが、ご容赦ください。

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第10位 幻魔大戦

幻魔大戦 全20冊合本版<幻魔大戦> (角川文庫)
幻魔大戦 全20冊合本版 image by Amazon

傑作揃いの平井和正作品の中で、世の中に最も認知された作品が「幻魔大戦」ではないでしょうか。

前半の3巻ぐらいまでは石ノ森章太郎との共著・コミック版「幻魔大戦」を下敷きにしていますので、文句なしの面白さです。

しかし、久保陽子の登場と「GENKEN」の設立によって物語は、宗教的なシミュレーション小説へと変貌していきます。

オウム真理教のモデルともなったと噂される問題作。

映画にもなったことを考えると10位は低すぎると憤慨する諸兄もいらっしゃると思いますが、実際にこの小説をトップ近くに配置するというのは無理というものです。

まず、長すぎる。
小説の体をなしていません。
スピード時代の現代に、この小説を読み通せる若者は、既にいないのではないでしょうか?

第9位 黄金の少女

黄金の少女1
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この小説はウルフガイ・シリーズの第2期の作品になります。
高橋留美子さんが平井和正の女神となってウルフガイシリーズは再始動を果たしました。
最初はハードカバーで出版されたシリーズです。

この作品を最初に読んだ際の評価は最低でした。
なぜなら、愛すべき「犬神明」が、いつまで経っても登場しないからです。
神明はストーリーの冒頭で登場しますが、完全な脇役にまわってしまいます。
物語はチェンバーズの街を襲撃するセイタンズとキンケイド署長の闘いが焦点になります。

この作品のじれったさといったらなかった。
しかし、再読によって評価が高まりました。

超常現象や超人の登場することが多かった平井和正の作品のなかで唯一普通の人間が主人公となった作品です。

精霊との関わり云々があるものの、これこそ正当なハルマゲドン小説に違いありません。

第8位 新幻魔大戦

新幻魔大戦
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新幻魔大戦は平井和正では珍しく時代小説です(未来から始まりますが…)。

由井正雪やクリストファー・フェレイラ(沢野忠庵)が登場します。
ベアトリス王女は「香川千波」と「タイプリーパー・お蝶」の接合体「お時」を、滅び行く未来から江戸時代へ送り込みます。

幻魔と闘うため、超能力者の末裔をつくる使命を与えられます。

この新幻魔大戦は壮大な幻魔シリーズの大本になるわけですが、この後に続く幻魔世界は過去・異世界・時空を越えた巨大なストーリーに膨れあがっていきます。

そのことがこの小説に最初から織り込み済みであったとしたら、平井和正はまさに天才です。

ウルフガイの祖先や幻魔正雪との不思議な因縁を持つまでのストーリーまでしか、描かれることはありませんでしたが、平井和正はタイムスリップものの傑作小説を生み出したのでした。

山田風太郎の「外道忍法帖」の影響もある感じがします。
時代背景が同じだけかな?

第7位 真幻魔大戦

真幻魔大戦〈18〉黄金の獣神 (徳間文庫)
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平井和正の超時空小説の元となったのは、この「真幻魔大戦」だと思います。

現代編・上代編・ムー世界編・犬の帝国編の4部構成となっていて(以前、ムー世界と犬の帝国をあわせて3部構成としましたが、ここでは4部としておきます。)、その世界の拡がりは平井和正の他の作品に類を見ません。

大人になった東丈がどれほどの超能力を発揮するのかに興味がありましたが、想像していた物質的な現象は皆無でした。その力はあまりにも強大で、無意識のうちに世界の運命までを変えてしまうものだったのです。

結局、「幻魔大戦」で東丈が失踪したタイミングで「真幻魔大戦」の東丈も姿を消してしまい。肩すかしを食ったような感じが残りました。

しかし、その後、杉村優里の活躍で再度、物語は吸引力を持ち始めるのですが、世界を渡ってしまいストーリーは迷走を始めます。

平井和正には珍しくキャラクターを置き去りにした作品だと思いますが、そのスケールと前半の東丈のスリリングさで、この位置になりました。

第6位 サイボーグ・ブルース

サイボーグ・ブルース
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マンガ「8マン」が桑田次郎の不祥事によって、討ち死に状態となり、平井和正のはけ口を失ったパトスは、この作品に流れ込むことになります。

サイバー・パンク小説の傑作との評価も高く、平井和正の小説では絶対におさえておかなくてはいけない作品です。

「8マン」と同じ能力を持ちながら、黒人の外見を持つサイボーグ特捜官の心を見事に描ききった傑作です。
しかも、謎のダーク・パワーの存在を臭わせて、まだまだ広がりそうな世界を構築していました。

ただ、1冊で終了させるには尺が足りない感じです。

3部作ぐらいで描いてくれたら良かったんですけど。

この続きは「BLUEシリーズ」に引き継がれていく予定だったのでしょうか?

第5位 死霊狩り

死霊狩り(ゾンビー・ハンター)1
死霊狩り(ゾンビー・ハンター)1 image by Amazon

平井和正の作品のなかでは珍しく3部構成で描ききった傑作です。
この作品はコミック「デスハンター」の原作小説で、「デスハンター」は小説で描かれた物語より先のエピソードがあります。

小説の切れのよい終わり方を読んでしまうと「デスハンター」のエンディングは蛇足のような感じが否めません。

いずれにしても、マシンを埋めこまれた目と片腕が強力な武器として最強の戦士に生まれ変わった田村俊夫の心の弱さが見事に描かれています。

田村俊夫が洗脳によって心を持たぬ兵器と化していくストーリーがこの作品の白眉です。
戦闘マシンとなってしまった俊夫の人間性を取り戻させたのは皮肉にも敵(デス)だったのです。

小説の最後は人類の暗部を暗示させるに留まっていますが、コミックではその部分まで描いてしまったのでした。

第4位 ボヘミアンガラス・ストリート

ボヘミアンガラス・ストリート 第1部 発熱少年
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ボヘミアンガラス・ストリートは平井和正の得意とする超次元と超能力というスパイスをふりかけた作品ですが、ピュアな恋愛小説です。

主人公・大上円と百合川蛍、白山小雪との関係は、まつもと泉の「きまぐれオレンジ☆ロード」をモチーフにしてます。

それ以外の設定も「きまぐれ〜」の影響を大きく受けています。

重層化した世界に紛れ込んでしまった、百合川蛍をさがしだし、大上円と関わりをもった世界を再構築するというクライマックスの感動的な展開は平井和正ならではのものです。

この作品にはまるのは少年か中年かどちらでしょうね?
私が読んだ時はもうかなり年を食っていましたが、青春時代に戻ったような錯覚を覚えました。

時間が割けたらもう一度読みたい作品です。

第3位 狼男だよ

狼男だよ アダルト・ウルフガイ・シリーズ (NON NOVEL)
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やはりアダルト・ウルフガイ・シリーズはベスト3に入ります。
平井作品の中でも陽気な狼男「犬神明」のストーリーは平井和正のアイデンティティーのひとつの側面に違いありません。

満月期の犬神明は不死身、新月期になると人間と同じになってしまうという設定を活かし、人間の心と痛快なヒーローものを結合した手腕が光ります。

もともと狼男といえば吸血鬼と同じルーツを持っています。
それを逆転させてヒーローに仕立てたことが、この人気作を生み出すことになりました。

アダルト・ウルフガイは晩年、神がかりになってしまってヒーローものの痛快さを捨ててしまうのですが、もともとストーリーに内在していた人間の業を描くことにとらわれすぎたからかもしれません。

ともあれ、この作品が平井和正の代表作です。
つまらない訳はないのです。

第2位 ABDUCTION

e文庫 『ABDUCTION-拉致-』 平井和正
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平井和正の死後、私はこのシリーズを平井和正のベスト小説に位置づけました。
この小説は超時空ものの野々村直哉のハーレム(or ジゴロ)小説だと私は思っています。

主人公の直哉は、様々な世界をやり直しながら、素敵な女性と何度も恋におち、その恋を成就させていきます。

そんな、小説が面白くないわけはありません。
人間の究極の願望を叶えてくれる小説が、このシリーズなのです。

…と言い切ってしまいましたが、他に面白い要素はないのか?
というご質問が出そうですね。

すみません。忘れてしまいました。
とにかく、ハーレム(or ジゴロ)小説なところがいいんです。

それ以外にもいっぱい見所があったような気がしますが、どうだったでしょうか?

第1位 狼の紋章

狼の紋章 ウルフガイ
狼の紋章 ウルフガイ image by Amazon

やはり、平井和正の傑作小説はウルフガイ・シリーズがトップになりました。
ABUDUCTIONの記憶が薄れてしまった今、私の中に強烈な光を放つ小説はこれしかありません。

青鹿晶子との愛は物質的には成就されることはありませんでしたが、それでもなお、心の結びつきは確固たるものでした。精神的な充足を求めた犬神明の情念が与えた感動は筆舌に尽くしがたいです。

さらに虎4の死によってストーリーは最高潮に達します。
この三角構造はある意味ボヘミアンガラス・ストリートに類するものがあります。

「狼の紋章」から「狼のレクイエム第二部」までの展開がどんな小説にも勝るのは、青鹿と虎4の対比があるからかもしれません。

惜しむらくは、その後のストーリーを平井和正が描いてしまったことでしょう。
「狼のレクイエム第二部」以降のストーリーを、私も切望したファンのひとりですが、存在しないほうが良かったと今となっては思ってしまいます。

「犬神明」編のオープニングなどは禅問答のようで、どうにも耐えられません。

まとめ

皆さんの順位はいかがでしょうか?
私とは全然違うかもしれませんね。

実は「悪霊の女王」をどこかに入れたかったのですが、漏れてしまいました。
きちんと再読した小説で、今読むと八剣士が集まって、これから面白くなりそう。…というところで続きが書かれなかったので、少しマイナスになりました。

読書中は文句なく面白い作品でした。

平井作品で10作を選ぶのは、かなり難しい作業ですね。
「アンドロイドお雪」も入れたかった。

時が経つとまた順位が変わるかもしれません。
折に触れてまとめておきたい企画ページとなりました。

© bluelady.jp


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