「死」の世界で「生命」の光を放つカタンドール(KATAN DOLL)。「天野可淡 復活譚」にみる球体関節人形作家・天野可淡の世界。

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この写真は球体関節人形のイメージです。紹介する天野可淡、四谷シモン、吉田良、恋月姫、清水真理、三浦悦子らの作品ではありません。




「球体関節人形」という言葉を知ったのは、PEACH-PITのコミック「ローゼンメイデン」を読んだ時です。
それまで、人形師といえば辻村寿三郎ぐらいしか知りませんでした。

しかし、調べてみると「球体関節人形」の世界はとても広大で、マニアックな世界だったのです。
アートとしても多様な表現がなされ、日本にも代表的な作家がたくさんいました。

四谷シモン、吉田良、恋月姫、清水真理、三浦悦子…等々

そんな球体関節人形作家たちの作品の中でも、異彩をはなっていたのが天野可淡の作品でした。

天野可淡は37歳の若さで既に亡くなっています。
しかし、残された「球体関節人形」はカタンドール(KATAN DOLL)とよばれ、この世界で第一人者であり続けているのです。

天野可淡は真の天才「球体関節人形作家」です。

その人形を一目見てしまうと、身の毛もよだつ恐ろしさです。
しかし、静謐な生命のようなものも感じることができる不思議な体験をすることが出来るでしょう。

天野可淡については以下のページが詳しいです。
是非、読んでください。

出典:【美術解説】天野可淡「早逝の球体関節人形作家」(Artpedia)

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カタンドール(KATAN DOLL)の世界

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Photo by Amazon:天野可淡 復活譚


天野可淡の人形写真を初めて見た時、心を奪われてしまいました。
冒頭で述べたように、知ったきっかけは「ローゼンメイデン」だったのですが、はじめて「球体関節人形」の写真を見たのは天野可淡だったのです。

1990年、天野可淡は交通事故で亡くなっていて、新しい作品が生み出されることはありません。
しかし、残されたカタンドール(KATAN DOLL)は壮絶なアート作品として、見るものを魅了し続けているのです。

そんな作家の作品集が「天野可淡 復活譚」です。

この作品集からは強烈な妖しさを感じました。
あたかも「死者の世界」が表現されているかのようです。

簡単に「死者の世界」と書いてしまいましたが、実際にはその世界には生々しさがあるのです。
現実にそこにある気がするのです。

あまりにも恐ろしいものを見てしまったような、でもその世界から目が離せない…そんな感覚にとらわれてしまいました。
2度とは見たくないと思いながら、見てしまう。
そんな世界です。

映画のオカルト作品を見る感覚と似ているかもしれませんが、一体一体の作品が放つ雰囲気は深淵です。

見るものの想像力によっていくらでも無限に拡大していく世界なのです。
その意味では映画を観るより重層な感覚を1冊の本から感じられるかもしれません。

まさに震撼する写真集です。

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人形が表現するのは「死 or 生」

この作品集には、一つだけ心を惹かれる写真がありました。
和服に身を包み、風車を口にくわえた作品です。

その他のページから生気を感じることはなかったのですが、この作品からは力強い意志が感じられたのです。

天野可淡の作品はうつろな「死」が感じられるものが多いのですが、その中にあってこの作品だけは「生」を放っているのです。
まさに堕天使サタンに通じる美しさを放っていました。

天野可淡は「生命」の輝きを知らせるために「死」を生み出し続けたのかもしれません。
そんな感じがしました。

その他のカタンドール(KATAN DOLL)の書籍

カタンドール(KATAN DOLL)をとりあげた書籍をピックアップしておきます。

今では新品を手に入れるのは難しいでしょう。

KATAN DOLL/カタンドール
Photo by Amazon:KATAN DOLL/カタンドール

KATAN DOLL fantasm―天野可淡人形作品集 (Panーexotica)
Photo by Amazon:KATAN DOLL fantasm―天野可淡人形作品集 (Panーexotica)

カタンドール・レトロスペクティヴ―天野可淡人形作品集 (Pan-Exotica)
Photo by Amazon:カタンドール・レトロスペクティヴ―天野可淡人形作品集 (Pan-Exotica)

これらの書籍の表紙にはメルヘンが感じられます。

しかし、「天野可淡 復活譚」はもっと恐ろしいものでした。

もし、実物を見てしまったら、どうなってしまうのでしょうか。
想像することもできません。

日本の「球体関節人形」作家

天野可淡以外にも冒頭であげた作家らの作品も素晴らしいものがたくさんあります。

四谷シモン

後述するハンス・ベルメールの作品に直接影響を受けた一人。日本の「球体関節人形作家の祖」と言えるかもしれません。

SIMONDOLL―四谷シモン
Photo by Amazon:SIMONDOLL―四谷シモン

吉田良

球体関節人形の技術的な側面を極めた作家。作品集以外にも人形制作の技術書を多く出版されています。

解体人形/Articulated Doll-----吉田良人形作品集 (Pan-Exotica)
Photo by Amazon:解体人形/Articulated Doll—–吉田良人形作品集 (Pan-Exotica)

恋月姫

私としては最も美しさを感じる作家さんです。

無憂宮 SANS SOUCI: 恋月姫人形作品集 (E´.T.insolite)
Photo by Amazon:無憂宮 SANS SOUCI: 恋月姫人形作品集 (E´.T.insolite)

清水真理

ヨーロッパ的な世界に和的な感覚を融合させた作品です。メルヘンチックな世界観に惹かれます。

Wachtraum(ヴァハトラウム)〜白昼夢 (TH ART Series)
Photo by Amazon:Wachtraum(ヴァハトラウム)〜白昼夢 (TH ART Series)

三浦悦子

作品のシュールさはトップではないでしょうか?

三浦悦子人形作品集 聖餐: EUCHARIST (Panーexotica)
Photo by Amazon:三浦悦子人形作品集 聖餐: EUCHARIST (Panーexotica)



以上のような日本を代表する「球体関節人形作家」のあまりにも幻想的で耽美な世界にしばし現実を忘れてしまいました。

日本独自の「球体関節人形」文化

そもそも「球体関節人形」は西洋のものだと思います。
では、どのように日本に入ってきたのでしょうか?

日本に「球体関節人形」が伝わったのは、ハンス・ベルメール(ドイツ人)の作品が紹介されたことによります。1965年のことです。

ハンス・ベルメールの作品については以下をご参照下さい。



このページを見て頂けると分かるように、ハンス・ベルメールはシュルレアリスムの極地を表現した作家といえます。

新装版 ザ・ドール---ハンス・ベルメール人形写真集 (パン・エキゾチカ)
Photo by Amazon:新装版 ザ・ドール—ハンス・ベルメール人形写真集 (パン・エキゾチカ)



ドイツに生まれた背景からも、こうした作品が生み出されることに違和感はありません。

その作風は「死」そのもののように見えるのが特徴といえます。

しかし、日本作家たちは、その「死」に「美」を見つけたのではないでしょうか?

カタンドール(KATAN DOLL)を見ると、日本の文化が見事に融合していることが分かります。あえていえば「日本の美」を表現しているのです。

さらに天野可淡を含めた日本の作家たちは、人形の中に「生命」を見出そうとしたように思えるのでした。

ハンス・ベルメールの対極に位置する文化が生まれたといって差し支えないでしょう。

その事実を「天野可淡 復活譚」から感じて欲しいと思います。

写真:片岡 佐吉
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by T.Y.

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