ブライアン・イーノをプロデューサーに迎え、前衛的でアーティスティックなアルバムを完成させたデヴィッド・ボウイ。それが1.Outside(アウトサイド)だ![1995年発表作品]

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photo by Al Pavangkanan

好きなアルバムだけに、アウトサイドを紹介するのは非常に難しいです。
ボウイのアルバムのなかで、確かなエポックを作った作品。期待外れだった「ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ」から2年、ボウイは完全に復活を遂げました。
カルロス・アロマーやリーブス・ガブレルスのギターもすばらしいが、マイク・ガーソンのピアノの繊細さがアルバムの芸術性を引き上げています。

アウトサイド

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ネーサン・アドラーの日記(ベビー・グレース・ブルーの儀祭殺人事件)を扱ったコンセプトアルバム

デヴィッド・ボウイは「ジギー・スターダスト」、「アラジン・セイン」、「シン・ホワイト・デューク」といったペルソナを登場させたさまざまなコンセプトアルバムを発表してきましたが、このアウトサイドは、ボウイが創作した「ベビー・グレース・ブルーの殺人事件」とそれを追う探偵「ネーサン・アドラーの日記」を元に、ストーリーに登場する人物達をボウイが演じるという手法がとられています。

僕の説明では分かりにくいので、ボウイの解説書から引用しておきます。

「アウトサイド」はボウイの最も寒々としたアルバムだろう(そして、そのことが多くを語っている)。このアルバムで扱われているのは、ベイビー・グレイス・ブルーという14歳の“アート・クライム/芸術犯罪”(彼女の内蔵が芸術として陳列されている)の犠牲者と、芸術/アート探偵のネイサン・アドラー教授による綿密な調査だ。何年ものあいだ、ステージでもレコードでもあからさまなキャラクター描写を避けてきたボウイが「アウトサイド」では奔放に、最重要容疑者である22歳のレオン・ブランク、アート・ドラッグとDNA紋/プリントを取引する78歳のアルジェリア・タッチシュリーク、全能の主演女優のラモーナ・A・ストーン、そしてミノタウロといったその他の登場人物を作り出し、演じている!これは、典型的なボウイのやり方どおり、コンセプトを無視したコンセプト・アルバムだ。

出典:全曲解説シリーズ デヴィッド・ボウイ(株式会社シンコーミュージック・エンターテイメント刊)著者:デヴィッド・バークレー

「ネーサン・アドラーの日記」はボウイネットで公開されたもので、日本版のアルバムにカキネン・テイヨの翻訳がついています。(最後に「続く」と記されていますが…)
ネットで紹介するのは、はばかられるような情景の猟奇殺人から日記は始まります。横溝正史をサイバー・パンクまでモダンにしたような感じといったら分かるでしょうか?

アウトサイドの場合はその殺人事件に登場する様々な人物を演じるというスタイルで、これまでのボウイにない実験を試みています。

ブライアン・イーノをプロデューサーに迎えて前衛的な作品を作り上げた。

アウトサイドはボウイの黄金期であるベルリン時代以後、袂を分かっていたブライアン・イーノがプロデューサーとして関わった作品です。
ブライアン・イーノはアンビエントの第一人者ですが、このアウトサイドの取り組みは特別なものになっています。

ブライアン・イーノはアウトサイドに参加したミュージシャンに役柄と台本をくばり、ミュージシャンの想像力を高めました。
このような取り組みの成果が、アウトサイドのダークでアヴァンギャルドな音楽性を生み出すことに貢献したことは間違いありません。
このアウトサイドはあまりにも前衛的だったために、商業的な面を考慮して、後に分かりやすい楽曲を追加する形で発表にこぎ着けたと聞いています。

アウトサイドは2000年まで続く5連作の第一章に過ぎず、「1.Outside」に続いて「2.Contamination」を準備中と発表されていましたが、実現されませんでした。

ネーサン・アドラーの日記・登場人物

ライナーノートを手がかりにまとめてみました。作品世界を知る上での参考にして下さい。
間違ってる、あるいは重要な登場人物が抜けている等、カキコお願いいたします。

  • ベイビー・グレース:解剖死体として発見される
  • ネーサン・アドラー:ロンドン芸術犯罪特捜部の探偵
  • マーク:タンシー:検視官
  • ラモーナ・A・ストーン:ベルリン白人自殺センターの司祭
  • レオン・ブランク:最重要容疑者
  • アルジェリア・タッチシュリーク:アートドラッグ・DNAプリント販売店舗経営
  • ミノタウロ:芸術家
  • ガイ・ボウリング:死体置き場の撮影を夢見る写真家
  • ダミエン・ハースト:血糊の儀式愛好家
  • ロン・アシー:元薬物中毒者でHIVに罹っているパフォーマンス・アーティスト
  • アコライト:性倒錯者
  • ロスコ:現代物品美術館の所有者だったが自殺
  • パディ:?

楽曲と登場人物の関連

アウトサウドの歌詞はウィリアム・バロウズ流のカット・アップ技法を導入して作られているとのことですが、訳詞にすると難解です。
各楽曲はストーリーの登場人物の誰のための歌かが付記されていますので、参考にして作品世界をご堪能下さい。
(アウトサイドとハーツ・フィルシー・レッスンのみ訳詞掲載、その他はタイトルと登場人物の付記のみ。欠番があるのはゼグエ -次の楽章への間奏曲- があるからです。)

2.アウトサイド(序章)

明日ではない
明日ではない
明日のことではない

それが起こるのは 今日
それは現代の損傷
今日を生きることに失敗した彼らは
外側を襲撃する
僕はあなたがたと共にいよう

明日ではない
起こっているのは今
明日のことではない

それが起こっているのは今
熱地帯の狂乱
精神病者と女神の手
命のつかみ合い
それがアウトサイドの音楽
アウトサイドの音楽

アウトサイドで起こっている
音楽はアウトサイド
アウトサイドで起こっている
音楽はアウトサイド

それが起こっているのは今
明日ではない
明日でもない
明日でもない

それが起こっているのは今
僕は今 君たちがほしい
僕は今日 君たちがほしい
君たちが必要なんだ

外側の音楽
それは外側で起こっている
音楽は外側にある
音楽は外側にある
外側
外側
外側
外側

3.ハーツ・フィルシー・レッスン(探偵ネーサン・アドラーによって歌われるために)

いつものようにダイアモンドと親しく
ラブモーテルに座り
心をみだらにたっぷりレッスンする
彼女と一緒なら 地獄まで百マイル

ああ ラモーナ ふたりの間に特別なことがあったなら
ああ ラモーナ ふたりの間に特別なことがあったなら
衣服にまさる親密な何かが

ふたりの空を結ぶ特別なもの
ふたりの空を結ぶ特別なもの
ふたりの血に流れる特別なもの
ふたりの空を結ぶ特別なもの

パディ 誰がミランダの服を着てるんだい?

それは心のみだらなレッスン
それは心のみだらなレッスン
それは心のみだらなレッスン
耳の聞こえない者にも降りかかる

それは心のみだらなレッスン
それは心のみだらなレッスン
それは心のみだらなレッスン
耳の聞こえない者にも降りかかる
耳の聞こえない者にも降りかかる

ああ ラモーナ 未来らしきものさえあったなら
ああ ラモーナ 未来らしきものと
紺碧の空さえあったなら

ふたりの空に浮かぶ特別なもの
ふたりの空に浮かぶ特別なもの
ふたりの血に浮かぶ特別なもの
ふたりの空に浮かぶ特別なもの

パディ 私を運んでくれないか 道に迷ったらしい
5歳年上の私はすでに墓の中さ
私はすでに
私はすでに
私はすでに
墓の中さ
私を運んでくれないか
パディ 道に迷ったらしい

パディ なんて素晴らしい死の混沌
パディ なんて素晴らしい死の混沌
パディ 皆にそう伝えてくれ

4.一片の土地(オックスフォードの住民によって歌われるために)
6.ハロー・スペースボーイ(パディによって歌われるために)
7.ザ・モーテル(レオン・ブランクによって歌われるために)
8.アイ・ハブ・ノット・ビーン・トゥ・オックスフォード・タウン(レオン・ブランクによって歌われるために)
9.ノー・コントロール(探偵ネーサン・アドラーによって歌われるために)
11.性倒錯者の完全なる破滅(美し者の死)(芸術家ミノタウロによって歌われるために)
12.アイ・アム・ウィズ・ネーム(ラモーナ・A・ストーンとその従者たちに歌われるために)
13.希望的始まり(芸術家ミノタウロによって歌われるために)
14.ウィ・プリック・ユー(裁判所のメンバーによって歌われるために)
16.アイム・ディレンジュド(芸術家ミノタウロによって歌われるために)
17.建築家たちの視線(レオン・ブランクによって歌われるために)
19.ストレンジャーズ・ホエン・ウイ・ミート(レオン・ブランクによって歌われるために)

※出典:アウトサイド BMGビクター株式会社 対訳:北沢杏里

以上の訳詞を見ていくと、ボウイの創造したキャラクターそれぞれが歌う楽曲の羅列に驚きを禁じ得ません。

デヴィッド・ボウイは一つのアルバムの中で近未来的な世界を作り上げることに成功しています。

「アウトサイド」は、その世界をサウンドを通して感じることが出来る特別なアルバムだということが分かります。

若いアーティストからの指示を受けた作品

アウトサイドはペットショップ・ボーイズやトレント・レズナーからの指示を受け共演を果たしています。
Hallo SpaceboyのPet Shop Boys Remixやトレント・レズナーがミックスしたThe Hearts Filthy LessonのALT.Mixはどちらも最高のできです。
特にトレント・レズナーのミックスはトランス状態に入れるかも。(アートワークもおもしろいです)

The Heart's Filthy Lesson

後にアウトテイクが出回ることに

アウトサイドはモントルーのマウンテンスタジオとニューヨークのヒットスタジオの2度に渡って録音されています。
噂ではマウンテンスタジオの録音は27時間にも及ぶとされ、この音源の公開が熱望されています。

後に、アウトテイク(Something Really Fishy The “1.Outside” – Outtakes)がネットで出回りました。
機会があればこれも手に入れて聴いてみて下さいね。

アウトテイクの正式発表とブライアン・イーノとの次なるコラボを期待して、記事を終えることにします。

コメント

  1. J より:

    outsideは90年代のボウイの作品で最も好きなアルバムです。
    発売当初、日本のロッ○キング✖️ンのレビューで大酷評されてましたが、今ではファンの間でも人気の高いアルバムかと。
    アウトサイドツアーでは普段のグレイテストヒッツ的なライブではやらないJoe the lionや、teenage wildlifeなどを演奏したり、Look back in angerやandy warholではアレンジを変え演奏されていてそれも素晴らしいです。

    • Lin より:

      Jさん
      書き込みありがとうございます。
      私の持っている1996年の東京の音源ではJoe the lionが入っていなくて残念。

      outsideはデヴィッド・ボウイの知性を示したアルバムとしても、大好きです。
      サウンドが前衛的で、レコード会社自体が難色を示したようですし、許容できない方も多かったのかもしれませんね。

  2. J より:

    東京公演行きました。 Strangers when we meetにとても感動したのを覚えています。
    前座の布袋氏の演奏が終わると帰ってしまうお客さんも多かったような。。

    欧州ツアーでカルロスアロマーが抜けてしまったのがレパートリーを変えた一因なのかもしれませんね。

    • Lin より:

      J さん
      とてもうらやましいです。
      持っている音源には布袋さんの参加した「All The Young Dudes」も入っていました。
      見てないので、全然情景が浮かびませんが…

      デヴィッド・ボウイの各ツアーのライブ・アルバムが公式で発表されることを切に願います。

  3. ジミー より:

    今一番聴いているのがOutsideなので、こちらに戻ってみました。
    このアルバムが出た頃、ロンドンに行ったり、夜出掛けては、リクエストしてHello Spaceboyで踊ったり、一番密接するかのように、聴いていました。
    すごく懐かしくなりましたが、今聴いても、本当にハマります。

    • Lin より:

      ジミーさん、ありがとうございます。
      このアルバムはデヴィッド・ボウイの中では特別ですね。
      もう一枚同じコンセプトで作ると言われながら、実現しなかったことが残念です。
      私は今はボウイの初期アルバムから聴いています。
      たこべえさんと同じようにマイベストを作ろうとしているんですが、曲を選ぶのは大変です。
      それというのも、デヴィッド・ボウイの各アルバムがアルバム毎にコンセプトやキャラクターを持っているためです。
      アルバムとしては好きかどうかが、はっきり分かるのですが、曲だけを選ぶのは少し抵抗がありますね。

      もちろん、この「Outside」は大好きです。

  4. ジミー より:

    LinさんがOutsideお好きだとよく書いていらっしゃいますが、私も共感します。
    あまりたくさんのアーチストを聴かないのでわかりませんが、ここまでキャラクターを作り、アルバムにする感性に、改めてため息が出ます。
    話はそれますが、F1の記事もチェックしますね。

    • Lin より:

      ジミーさん、ありがとうございます。
      F1記事もよろしくお願いします。
      ライブで見るのは、きつい時間帯もあるのですが、なんとか頑張って見たいとおもいます。