デヴィッド・ボウイは何度目の「最高傑作」を生み出すのか? 最高傑作としか言いようがない「ステイション・トゥ・ステイション(Station To Station)」(1976年1月発表)

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imagephoto by Anders Abrahamsson

1975年、映画「地球に落ちてきた男」の撮影を終えた、デヴィッド・ボウイは映画のワンシーンをジャケットに採用した「ステイション・トゥ・ステイション」を発表します。

前作「ヤング・アメリカンズ」でドップリと黒人音楽・ソウルにハマったデビッド・ボウイは、そのテイストにヨーロッパ的な感覚を持ち込み(ドイツのクラフトワークの影響が顕著)、より洗練されたサウンドをものにしています。

ただ、ボウイはこのアルバムを作ったことも覚えてないというほどの、コカイン中毒におかされていました。やせこけ、不健康な顔つきのボウイは、そのままの現実を表した新しいペルソナを生み出します。

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「地球に落ちてきた男」との関係

デヴィッド・ボウイは「地球に落ちてきた男」のサントラに取り組んでいた言われています。しかし、その企画は不調に終わり、サントラのために書いた「Golden Years」と「TVC15」はこのアルバムに収録されることになります。

「地球に落ちてきた男」は異星への望郷の想いを抱きながら、帰還することの出来なかった男の物語ですが、「ステイション・トゥ・ステイション」というタイトルにもヨーロッパへの帰郷の想いが込められてるようです。

また、冒頭でも述べたように「地球に落ちてきた男」のワンシーンがジャケットになっています。

Station To Station [Special Edition] (3CD) by EMI 【並行輸入品】

最後のペルソナ「シン・ホワイト・デューク」

もともと企画段階のアルバムの名前は「リターン・オブ・ザ・シン・ホワイト・デューク」とされていました。そのフレーズは「Station To Station」の冒頭の一節です。

1976年2月から開始された「ステイション・トゥ・ステイション」ツアーではデヴィッド・ボウイはモノクロの衣装に身をつつんだ「シン・ホワイト・デューク」を演じていますが、ボウイがアルバムに別人格を持ち込むのは、この「シン・ホワイト・デューク」で最後といわれています。

それまでのベルソナはデヴィッド・ボウイとは全く違った人格でしたが、この「シン・ホワイト・デューク」は当時のドラッグ中毒のデヴィッド・ボウイをそのまま表したもので、ペルソナと自分自身を同一視することが可能になったボウイの心境の変化を表していると言われていたりもします。

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photo by Jean-Luc Ourlin

ドラッグとオカルトに耽溺していた特殊な時期

ボウイはこの時期ドラッグにおかされ、記憶を失うこともしばしばだったようです。また、オカルトや黒魔術に深入りし、その影響がこのアルバムにも色濃く反映されています。

1曲目で黒魔術、オカルト信仰、コカイン常用などを告白し、2曲目では自身に忠告し、3曲目でその忠告を受け入れ救済を見いだしている。

(中略)
(以下、「Station To Station」の説明)

曲を通じて海、サークル(生命の樹)、「ケテルからマルクトに至る不思議なひと時」など、オカルトめいた言葉が出てくる。ケテル(王冠)やマルクト(王国)はカバラというユダヤの神秘主義の言葉で、カバラは中世から現代に至るまでオカルト信者が好んで信仰している

出典:P136 「デヴィッド・ボウイ コンプリート・ワークス」 著者:パオロ・ヒューイット(TOブックス発行)

CD世代では忘れがちですが、このアルバムはA面:3曲、B面:3曲の6曲構成です。そのため、前半の3曲に特別な意味を持たせてあるということが言われています。

引用した箇所以外にも、この本の「ステイション・トゥ・ステイション」のチャプターには、前半3曲の詳細が当時のボウイの状況から解説されています。
非常に興味深い記述なので、是非、読んでみて下さい。

いままで、この本を参考資料の一つにしてきましたが、このチャプターが最も面白かったです。

デヴィッド・ボウイ コンプリート・ワークス

濃密な6曲構成がとても好きなアルバム

ここまで、さまざまな資料から書いてきました。
ボウイ記事が段々トリビアめいてきたので、少しトーンを下げます。

資料については、当ブログの「参考資料」参照のこと

「ステイション・トゥ・ステイション」は、デヴィッド・ボウイのアルバムの中でも5本の指に入るアルバムだと思います。

6曲という曲数は少ないですが、冒頭の「Station To Station」から「Golden Years」「Word On A Wing」まで、そして少しコミカルな「TVC 15」、ライブでも圧倒的な「Stay」、ボウイの楽曲では最も美しいものの一つ「Wild Is The Wind」。

どこを切り取ってもボウイの才能が溢れています。

歌声もドラッグにおかされていたとは思えないほど、素晴らしいです。

これ以上のアルバムをどうやって探せばいいのでしょうと思うくらいです。
(ボウイは他にもすごいアルバムがいっぱいあるのですが…)

「ヤング・アメリカンズ」で接近したブラック・ミュージックはボウイのなかで昇華されて、ボウイにしか表現できない傑作アルバムを生み出したのでした。

そして、この流れはベルリン3部作に引き継がれていくことになります。
このアルバムはクラフトワークの影響もあるので、アメリカからヨーロッパへの橋渡しをしたアルバムと言えそうですね。

www.bluelady.jp

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コメント

  1. aladdindogs より:

    やまりんさん、こんにちは。
    遂に「ステ・ステ」の登場ですね。

    「ステ・ステ」をボウイの最高傑作に挙げるファンも結構います。確かに「超大作」と言うか、スケールの大きさ、ダイナミズムは、グラム期を遥かに超えていますから。
    勿論、私も大好きなアルバムで、2010年に発売された「Deluxe Edition」は私の宝物と言えます。

    全6曲と言う大胆な構成ですが、どの曲も長いのに、全く飽きさせません。
    そして、次作「ロウ」はまるで、間逆の構成になっているのも、面白いですよね。こちらも又、傑作なんですけど。

    • やまりん より:

      aladdindogsさま
      ありがとうございます。
      実は、今では「Station to Station BOX Deluxe Edition」を買わなかったことを後悔してます。
      私が持ってるのはCD版の「Spetial Edition」だったので、構成が違うんですね。
      以前のコメントでシングル曲のお話しがあったと思いますが、それで気づきました。
      レコードプレイヤーを引っ張り出して聴く気がなかったからかな?
      中古も嫌だし、高価なのでもう買う気はなくなりましたが…

      ベルリン3部作に入る前に箸休め的な記事が1発入ります。
      明日、0時5分ごろ公開予定です。

      べルリン3部作の記事については全く着手してませんので、少し間が空くかもしれません。

  2. aladdindogs より:

    やまりんさん、「Deluxe Edition」今だとタワレコ・オンライン取り寄せで、15,138円ですね。
    私は、5年前に12,000円位で購入しました。(安く買えたほうだと思います。当時から、大体13,000〜15,000はしていたと思います。)