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「8マンvsサイボーグ009」出版を機に加速装置のルーツやサイボーグの意味を考える

連載中全く興味のわかなかった『8マンvsサイボーグ009』ですが、原作に「平井和正」「桑田二郎」「石ノ森章太郎」の名前を連ねる作品とあっては、無視できなくなってしまいました。

石ノ森作品のリメイクでは定評のある早瀬マサトの描く8マンがどんな出来なのか、興味もありました。

このコミックを楽しませていただいた後、いくつか疑問がおきました。

このページでは、それについて触れていきます。

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8マンとサイボーグ009はどちらが先に世に出たのか

まず、「8マン」と「009」はどちらも「加速装置」を持っているということをしっています。

そのことで、どちらが先に世に出たのかが気になりました。

もちろん、記憶は定かでは無いものの「8マン」が先だろうとは思っていたのですが…


平井和正は『「未踏の高峰へ」- サイボーグ戦士たちに寄せて – 』というタイトルで、小学館文庫「サイボーグ009」②に解説を寄稿しています。(1976.6.20)

平井和正の「夜にかかる虹 上』に全文が掲載されています。

夜にかかる虹

『夜にかかる虹』は平井和正のエッセイ集です。上下巻で1990年に出版されています。

既発の『HIRAIST』と内容は同じです。

平井和正のデビューから1990年ごろまでの状況が分かる貴重なエッセイ集です。


まだ、石ノ森章太郎氏生前の文章です。

『サイボーグ009』が少年週刊誌(少年キング)を舞台にスタートしたのは、一九六三年のことであるし、以来、発表誌を変えながら今日に至るまで息長く描きつづけられた本書は途中、講談社児童漫画賞を受賞したりしながら、単行本にまとまり、たいへんなロングセラーとなっている。

出典:「夜にかかる虹 上」p62 1990年7月25日発行 リム出版 

という書き出しがあります。


平井和正の文章によると、『サイボーグ009』は1963年ということになっているのですが、実はこの『夜にかかる虹 上』(あるいは『HIRAIST』)を出稿した時点で、以下のように訂正しています。

石森章太郎の『サイボーグ009』が登場したのは、私がTBSテレビの″エイトマン・ルーム″でTV動画『エイトマン』を手がけている時分だったから、1964年だ。

出典:「夜にかかる虹 上」p65 1990年7月25日発行 リム出版 

平井和正は『サイボーグ009』②の解説を書いた際には思い違いをしていたのでしょう。1963年は「8マン」が連載を開始した年です。

やはり『8マン』のコミックの方が先に世に出ているわけです。

では、前述した「加速装置」は平井和正が考案したものだったのでしょうか?

1963年というと、まだ、私はものごころついたばかりです。

このあたりの事情は全く分かりません。

ということで、ウィキペディアで調べてみることにしました。

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「加速装置」のルーツは

実は『8マン』の第1巻に「加速装置」という言葉は記載されていません。

「8マン」はハイスピードで「弾丸よりも速く」動けるスーパーロボットという設定です。

どこにも「加速装置」を搭載しているとは書かれていません。

しかし、機能からいって「サイボーグ009 島村ジョー」とかぶるところが多く、「8マン」の機能も「加速装置」といってよさそうです。

加速装置の原型

人間の反応速度を加速するというアイデアが使われた最初期のSF作品は、H・G・ウェルズの短編小説『新加速剤(英語版)』(1901年)である。ただし、この作品では加速能力を得るために機械装置ではなく薬物が使われる。

エドモンド・ハミルトンのキャプテン・フューチャーシリーズの1編『謎の宇宙船強奪団 (Star Trail to Glory)』(1941年)、アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』(1956年、日本語訳は1964年、中田耕治訳)には機械装置としての加速装置が登場する。特に『虎よ、虎よ!』では、装置が外付けではなく、体の中に埋め込んであり、「奥歯に隠されたスイッチ」で装置を起動するなど、その後の『009』でのスタイルの原型が見られる。

日本の漫画作品では手塚治虫が『新世界ルルー』(1951年)で自分以外の時間を停止させる能力を描いている。

出典:「加速装置」フリー百科事典 ウィキペディア日本語版(2023年7月22日取得)

ウィキペディアによると1901年ごろから加速する概念は生まれているようです。

一歩後退して、舌で上の門歯を押した。全神経系統がうなりをあげて活動を開始し、からだのなかのありとあらゆる感覚や反射が五官のひとつによって加速された。
その効果はただちに外部の世界の活動を一瞬にして極度のスロー・モーションにすることだった。音がきわめてこまかく分解してしまう。色はスペクトルを赤にしてしまった。襲撃してきた二人は夢のようなけだるい不活発さで彼のほうに向かってただよってくるような感じだった。いっさいの外部が緩慢になるのに対して、フォイルの活動は眼にもとまらぬ早さだった。

出典:「虎よ、虎よ!」アルフレッド・ベスター 訳者:中田耕治 2008年2月25日発行(早川書房) p207

実は、アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』では「加速装置」という名称は出てきません。

しかし『サイボーグ009』の加速装置は、アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』から、持ち込まれたことは間違いないでしょう。

起動スイッチが歯にあることなどは、そのままです。

年代的に見て「8マン」の高速機能も、アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』に強い影響を受けていると思って間違いありません。

平井和正のウルフガイシリーズ『狼は泣かず(別名:人狼、暁に死す)』には「虎よ! 虎よ!」という章題がつけられています。

また、『夜にかかる虹 上』に掲載されたエッセイ「SF的思考法 SFマンガ」でも、アシモフや小松左京らとともに「ベスター」の名前が記されていますので、平井和正はアルフレッド・ベスターのファンだったのかもしれません。

とはいえ、『サイボーグ009』のようにそのまま拝借するのではなく、スーパーロボットの機能として、少しだけひねりが加わっているのが平井和正らしいと思います。

ウルフガイの『虎よ! 虎よ!』では、さらにひとひねり加えられています。

「第三者的にみた加速能力の結果」が悪霊的な超能力として描かれているのです。

やはり、平井和正の力量はスゴイですね。

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8マンは何者なのか

『夜にかかる虹 上』からさらに引用してみます。平井和正が『「未踏の高峰へ」- サイボーグ戦士たちに寄せて – 』に追加したコメントの部分です。

(石森章太郎の『サイボーグ009』が登場したのは、私がTBSテレビの″エイトマン・ルーム″でTV動画『エイトマン」を手がけている時分だったから、1964年だ。超高速でアクションを演じる8マンと加速性能を具えるサイボーグ009は共通点があるので、気になる存在だった。8マンは一応スーパー・ロボツトと命名されているが、人間の意識を電子脳に複写するというコンセプトでは、サイボーグである。当時のSFの少年漫画誌への普及度では、サイボーグという用需を持ち込むこと自体が許されなかった。天才少年漫画家としてデヴューした石森章太郎だから平然とやってのけられたのだ。華麗なテクニックで高度な内容を楽々と盛り込む手段に敬服はしたものの、児童漫画に徹した職人、桑田次郎の分かり易さを主眼とする作画レベルでカットされてしまうことが、あまりにも多すぎて、絶えず欲求不満に陥っている私には無念な思いが常にあった。しかし、漫画でいつも味わったフラストレーションを小説で償うことになったのだから、それもよしとしなければなるまい。)

出典:「夜にかかる虹 上」p65 1990年7月25日発行 リム出版 

「8マンは一応スーパー・ロボツトと命名されているが、人間の意識を電子脳に複写するというコンセプトでは、サイボーグである。」

…と記されています。

『8マン』が後に『サイボーグ・ブルース』としてノベライズされたのは有名です。

『サイボーグ・ブルース』はタイトルに「サイボーグ」と記されていますし、主人公のアーネスト・ライトは外見状は人間ですから、「サイボーグ」という言葉が腑に落ちます。

しかし、「8マン」は電子頭脳に人間の記憶を複写された存在です。それは「サイボーグ」ではないという印象が強くあります。

「スーパーロボット」という表現はコミック的です。

そのため、私は今まで「8マン」は「アンドロイド」あるいは「バイオノイド」だと思っていました。

私の思い込みが大きく間違っていないことを示すためにウィキペディアを引用しておきます。

アンドロイド(android、ラテン語:androides)

ギリシア語のandro-(人、男性)と接尾辞-oid(-のようなもの、-もどき)の組み合わせで、人型ロボットなどの人に似せて作られた存在を指す。ヒューマノイド(humanoid、英語のhuman(人)と-oidの組み合わせ)とは、由来する言語が異なる同じ構造の語であり、ほぼ同義である。「andro-」が男性の意味も持つことから、女性型アンドロイドをガイノイド (gynoid)と呼び分けている作品も見られる。(以下略)

バイオノイド(bionoid)、バイオロイド(bioroid)

いずれもバイオ(バイオニクス、バイオテクノロジー)とアンドロイドを組み合わせた語であり、SF作品に登場する人型のロボットを指す。
バイオノイドは1980年頃から用いられている語で、初期の用例としては、映画『スペース・サタン』(アメリカ、1980年)が日本公開された際のチラシやパンフレットにおいて、同作に登場するロボット「ヘクター」を「バイオノイド」と紹介している。用語辞典では

  • SFアニメなどに登場する、人間に近い生体や心を持つ人造人間
  • 人間の体をしているロボット

と記載されている。(以下略)

出典:「人造人間」フリー百科事典 ウィキペディア日本語版(2023年7月22日取得)

石ノ森章太郎の作品に『人造人間キカイダー』があります。

これは、『8マン』を出発点としている作品です。

今なら、『エヴァンゲリオン』もありますし、「8マン」も「人造人間」という言葉がしっくりくるかもしれません。

『8マンvsサイボーグ009』の原作者・七月鏡一は「8マン」は「マシナリー」であるといっています。

しかし、「マシナリー」は平井和正の晩年の作品(「インフィニティー・ブルー」等)で生まれた言葉で、実体を明確にする前に、平井和正は亡くなってしまいました。

私は「マシナリー」には霊的な意味合いが含まれていると思っていますので、「8マン」が「マシナリー」といわれると少々困ってしまいます。

「マシナリー」は『攻殻機動隊』の「ゴースト」に近いイメージです。

「8マン」が機械のみから作られている存在であるという事実が、分類を難しくさせます。
「8マンは何者なのか?」という問いに対しては明確な結論が得られそうにありません。

平井和正が「人間の意識を電子脳に複写するというコンセプトでは、サイボーグである。」といっているのは「サイボーグにしたかった」という意味ではないかと思います。

そうでなければ「サイボーグ・ブルース」が生まれることはなかったでしょう。

平井和正が生み出した「8マン」は「人間の記憶をもった機械」だということで、何にも分類できない孤高の存在なのです。

8マンの傑作「決闘」にみる当時の制約

「8マンvsサイボーグ009」は全2巻です。

最終巻には平井和正+桑田次郎の傑作「決闘」が掲載されています。

「決闘」は谷博士の息子「ケン」と「8マン」が闘うストーリーです。

この「ケン」にはコミック中で「スーパーロボットに生まれ変わった」というセリフがあります。

しかし、「ケン」は「人間の脳」のままだったのです。

まさに「ケン」こそ「サイボーグ」と言えるでしょう。

しかし『8マン』では「サイボーグ」という言葉は使われませんでした。

当時の制約が伺い知れるエピソードとなっています。

さらに「8マンvsサイボーグ009」の2巻の巻末には、平井和正のシナリオも掲載されています。

これが読めるだけでも「8マンvsサイボーグ009」の購入価値はあります。

最後に

最後に「8マンvsサイボーグ009」のストレートな感想を記しておきます。

コミックとしては楽しめました。

しかし、「8マン」の作画に違和感がありました。子供っぽいのです。

桑田次郎(二郎ではない)が描いた「8マン」は、もっと大人っぽいです。

「(強化)タバコ」が似合うのです。

桑田次郎が晩年に描いた最終話もすでに「8マン」ではなくなっていました。

1963年から1965年の桑田次郎だけが描けた特別な作品が「8マン」です。

60年もの歳月を経て、甦らせることに意味があったのかどうか、疑わしい思いです。

「8マンvsサイボーグ009」が好評だったことを祈るばかりです。

私は「8マン」の大ファンですが、平井作品で、このエンディングは絶対にないと思いました。

©bluelady.jp


オススメ

このページで紹介した本へのリンクをはっておきます。

是非、読んでみてください。

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