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平井和正の「∞BLUE」を紐解く。「21世紀8マン」とは何だったのか?

2002年出版の平井和正「∞BLUE(インフィニティ・ブルー)」についての記事を、当時の文章とあわせながら再構築することを試みることにする。

この作品は「21世紀8マン」と呼ばれながら、発売時に大きな期待を持って迎えられた作品である。

発売前は「サイボーグブルース」のような作品となることを予想したのだが、当時の平井和正の作品からは情念が薄れてしまったような印象を受ける。

あるいはストレートに「サイボーグブルース」を期待したがため、期待外れに終わった印象だったのかもしれない。

 

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∞BLUE

以下が発売当時のメモである。

8/31、∞BLUEが到着した。
4冊の箱入りの豪華本である。
イラストは全てカラーだ。
泉谷さんのイラストはまた一段とうまくなっている。
おそろしいクォリティーに達している。

多忙故、本編を読むことがかなわないと覚って、あとがきを全て読んでしまった。
8マン原作の忸怩たるおもいが綴られている。
それがこの作品を生んだ原動力となっているのだろうか?

(2002.9.1)

平井和正は文庫本が似合う作家であった。
幻魔大戦全20巻が角川文庫で発表されたことも、それを裏付けている。
しかし、このハードカバー本の発売は本当に待ちに待ったものだったのだ。

当時のメモを見ると泉谷氏のイラストに感動しているようだが、実際に泉谷氏の実力が発揮されるのは、ヤングチャンピオンコミックスの「ウルフガイ」を待たねばならない。

「∞BLUE」という作品は平井和正の実験的な作品なのではないかと思っている。
例えば「キンケイド署長」「犬神明」が同系統の作品だろう。

それらは「真幻魔大戦」の雰囲気を持っていながら、「真幻魔大戦」を超えられなかったように思う。

そのために平井和正は「幻魔大戦deep」のような作品に舵を切るしかなかったのではないだろうか?

 

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犬鷲の子ら

「∞BLUE」第1章が「犬鷲の子ら」である。

第1集を読み終えようとしている。「21世紀8マン」を期待して読み進めたが完全にはぐらかされた。

これは、「黄金の少女」を読んだときと同様の感覚だ。いい意味でと言っておこう。
やはりストレートな続編は期待できないということだ。

作品のタッチは「犬神明」と同様のものを感じる。テーマも今のところ似ているように思う。
しかし「21世紀8マン」というキーワードは依然、力をなくしてはいない。
「あの人と同じ人なのかな?」とか、「ほんとはあの人がマシナリーなのでは?」とか、つい考えてしまうのだ。これがストーリーの吸引力をさらに強めている。平井和正の術中にはまってしまった思いだ。

(2002.9.8)

このメモからすると「21世紀8マン」や「マシナリー」という言葉を楽しんでいるようだが、実は「BLUE HIGHWAYS」のときから「マシナリー」に抵抗感がある。

想像できないのだ。平井作品にそぐわない感じもする。
「サイボーグブルース」はよかった…などと思ってしまうのはサイボーグ009をはじめとするサイボーグものに親しんだ世代だからだろうか。

 

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マルコ

マルコは「∞BLUE」第2章のタイトルである。
ここまでが1巻なのだが、以下のメモは「∞BLUE No.2 マルコ」というタイトルで書かれている。

「∞BLUE」やっと第2集に手をかけた。オフィシャルサイトの掲示板を見るとかなりの方が読み終えてしまっている。なんて早いんだろうか?
私は本を読む速度がだんだん遅くなっているように思えてならない。しかしゆっくり読むのもいい。楽しみが持続するからだ。

マルコの登場は衝撃だった、○性のはずが○性だなんて、しかし、これがマシナリーということなのだろうか。ますます、マシナリーが分からなくなってくる。
それにサーシャとサチコの関係も。
サーシャは8マンのサチコと同一人物ではないだろうか?
この3人はどちらにしても平井作品の女神様に違いない。

(2002.9.15)

平井和正には「女神」と言われるキャラクターが多数登場している。
時には実在の人物である、高橋佳子氏、高橋真理子氏の場合もあったようだが…

「女神」は作品を進めていく重要な存在であり、「8マン」のサチコ、「幻魔大戦」の東三千子、「地球樹の女神」の後藤由紀子、「転生」の内藤由紀らのように様々なキャラクターとして登場する。

実際は平井和正の中学時代の憧れのひとである。

平井和正はロマンチックな人なのだ。
男性なら、誰しも同じような存在が居るのだろうが、作品世界に投影することができた平井和正は幸せな男性だと思わざるを得ない。

 

ディアブロ

これはランボルギーニの名前ではなかったか・・・
この1周間、超多忙のためディアブロどまりである。
はやく読み終えたいのであるが・・・
さみしい。

いままで毎週、1冊の半分ずつ読み進めているので、いいかも。
サーシャがいなくなってしまったのでどうしたのかな〜と思っているところ。

(2002.9.22)

4つめのメモは「ディアブロ」というタイトルが打たれている。

「マルコ」「ディアブロ」共に「∞BLUE」のキャラクターであるが、「マルコ」がヨハネだとすると続くのが悪魔という章になることから、いかにも平井和正らしいと思ってしまうのである。

……

メモが残っていたのはここまでだった。
ストーリーの前半である。

このあと、「ユカリ」「フィリッパ」「サチコ」「リンク」「アンジェリーナ」というタイトルの章がつづく。

一部を除いてキャラクター名が続くのが面白い。

「∞BLUE」は2度読んでいるのだが、どうしても後半のストーリーがぼやけてしまっている。記憶が曖昧になっているのだ。

 

21世紀8マン

やはり「21世紀8マン」とは何だったのかと問わざるを得ない。

平井和正は「8マン」を新しい造語「マシナリー」として魂を持った存在に格上げしようと図ったのかもしれない。

さらには「サイボーグ・ブルース」アーネスト・ライトのその先を目指したのかもしれない。

今となっては、平井和正最終的に何を見ていたのかはハッキリとしない。

だが、これだけは言えるだろう。
「マシナリー」では、魂を表現できない。
あまりにも機械に近すぎると感じる言葉である。
これは平井和正の失敗だったのだと断言しておく。

 

© bluelady.jp


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