平井和正から大藪春彦へ – 狼は暁を駆ける(ハイウェイ・ハンター・シリーズ)解説より

15121034197_5bf654b984_k

photo by zeitfaenger.at

光文社文庫からハイウェイ・ハンター・シリーズが立て続けに刊行されています。
私は平井和正のアダルト・ウルフガイ・シリーズのファンになった時期を同じくして、大藪春彦の小説も読みあさっていました。
しかし、このハイウェイ・ハンター・シリーズを読んだのはつい最近です。
ただ、このハイウェイ・ハンター・シリーズの主人公、「西条秀夫」の名前だけは知っていました。
ウルフガイ・シリーズで主役級の活躍を見せる悪役「西条恵」のモデルとなったのは、この「西条秀夫」だからです。

スポンサーリンク
AdSence

「狼は暁を駆ける」解説者:樋口明雄(作家)

申し訳ないのですが、私はこの作家を全く存じ上げませんでした。この方も平井和正・大藪春彦のファンであるとか。
解説の導入は以下の様に始まります。

かつて平井和正という作家がいた。
代表作ともいえる、<狼の紋章>や<狼男だよ>などのウルフガイ・シリーズを、十代半ばに夢中になって読みふけっていた。我が国のSFという分野における嚆矢のひとりであったし、今にして思えば、冒険小説というジャンルの先駆的存在でもあった。
今年の1月、突然の訃報が飛び込んできた。すでに過去の人という観はあったものの、自分がずっと大事にしてきたものが、急に消えたような寂しさに見舞われて、しばし打ちひしがれていた。

出典:狼は暁を駆ける(大藪春彦)、光文社文庫・解説:樋口明雄

この解説の出だしを読んだ私は、共感と反発という相反する感情がこみ上げました。

<共感>

  • ウルフガイシリーズのファン
  • 訃報を知ったときの喪失感

<反発>

  • 平井和正を過去の人にしてしまった
  • どうして平井和正が冒険小説の先駆なのか

私がこのようなブログに精を出しているのは、平井和正を過去の人としたくない思いからなのです。
あまつさえ、亡くなる前から「過去の人」とされてしまうと、私自体が否定された気になりました。

それに、平井和正を冒険小説家とする意見は承服しかねます。

とまれ、この解説は私に平井和正の原点を思い出させてくれました。

平井和正はレイモンド・チャンドラーと大藪春彦の愛読者

平井和正の原点がハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラーと大藪春彦であることは、平井自身が告白していました。
私は、平井和正が大藪春彦の「野獣死すべし」を読んで、ハードボイルド作家への道を断念したということをどこかで読んでいたのです。

その記憶は鮮明なのだけど、どこだったか分からず、本を(既に自炊して電子書籍になっている)検索しました。
やはりこのような独白めいた記事は「夜にかかる虹 上」(リム出版)にありました。

この本には平井和正が書いた「骨肉の掟」(大藪春彦作品)解説が丸ごと収められています。
異例の30枚という原稿枚数を費やして、大藪春彦の「野獣死すべし」を読んだときのショックやその作品のすばらしさを解説。また、大藪春彦のルーツにも触れ、その作品世界の解明をはかっています。
(1ヶ月がかりで書いたと告白されています)

また、「別冊新評:大藪春彦の世界」への寄稿も全文掲載されています。

平井和正がいかに大藪春彦を愛していたかがよく分かります。
大藪ファンにも「夜にかかる虹 上」(リム出版)を手にとって頂きたいと思います。
「骨肉の掟」解説は必読です。

平井和正から大藪春彦へ

樋口明雄さんの解説は平井和正から大藪春彦への流れでしたが、実は私の読書歴もこれと同じ流れと言えなくはないのです。
平井和正が神秘主義に走ってからというもの、狂おしいほどのパトスは作品から消え去ってしまいました。
それを大藪春彦(や一時期の夢枕獏)の小説に求めたことは間違いありません。(夢枕獏の「闇狩り師」はいいです)
たぶん、多くの平井ファンが同じように流れていったのではないかと思います。

しかし、その変化はファンにとって多様な作品を読める喜びでもあったと思います。
少なくとも私の場合はそうです。

時代の流れのなかで様々な作品を提供してくれた平井和正という作家と出会ったことで、豊かな時間を持つことができたことに感謝して、このブログを続けています。

最後にハイウェイ・ハンターシリーズのPR

光文社文庫から以下のハイウェイ・ハンターシリーズが出てます。
スーパーヒーロー、西条秀夫の活躍は以下の作品で楽しめます。