書籍の電子化・自炊のはじめ方
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三億円強奪事件から50年。モデルとなったと言われる大藪春彦の小説「血まみれの野獣」を読む。

三億円事件(三億円強奪事件)が起こったのは1968年12月10日。
当時、盗まれた金額の大きさから大事件になっていました。(今では30億円の価値とも言われます。)
子供だった私もその日のことは記憶しています。家族が騒いでいました。

この事件は1975年に時効が成立し迷宮入りになってしまいました。

犯人は警官に化け、偽装した白バイで現金輸送車を停車させました。
車の下をのぞき込んだ犯人は、発煙筒を焚き、爆発物があると偽って、現金輸送車の乗務員全員を避難させています。
その後、輸送車を乗っ取って逃走。
たくさんの遺留物を残しながらも、犯人が特定されることはありませんでした。

この事件は後に、フィクションとしてドラマや小説、漫画等で取り上げられることになりました。

そのため知らない人は少ないであろうと思います。

また、この事件にはモデルとなったと言われる小説があることも広く知られています。
それが大藪春彦の「血まみれの野獣」です。

大藪春彦のファンである私ですが「血まみれの野獣」は読んだことがありませんでした。

三億円強奪事件から50年という節目に、はじめて「血まみれの野獣」を読みました。

この小説は本当に三億円事件のモデルだったのでしょうか?

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大藪春彦の「血まみれの野獣」

血まみれの野獣 (光文社文庫)
血まみれの野獣 (光文社文庫) image by Amazon

 

事件当時、小学生でしかなかった私は大藪春彦の「血まみれの野獣」のことを知るよしもありません。

大藪春彦に出会うのは10代半ばになってからです。

大藪春彦の小説「血まみれの野獣」が三億円事件のモデルになったことを知るまでには、さらに数年が必要でした。

大藪春彦自身が当時、事情聴取を受けたことを語っています。
私がそのことを知ったのは何かのあとがきか、大藪春彦の特集本でのことだったと思います。

大藪春彦の数多くの小説に現金を強奪するシーンは出てきます。
「蘇る金狼」や「伊達邦彦」のシリーズを読み終えると、大藪春彦の小説は「三億円事件」のモデルになるかもしれないと漠然と思うくらいで「血まみれの野獣」に手を伸ばすことはありませんでした。

……

今年が三億円事件から50年ということを読売オンラインで知りました。

参照 3億円事件半世紀…「警官の息子犯人説」の舞台裏(YOMIURI ONLINE)

それを機に大藪春彦の小説「血まみれの野獣」を手に取ることになったのです。

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「血まみれの野獣」は大藪春彦得意の復讐劇でレーサーもの

「血まみれの野獣」は天才二輪レーサーの復讐劇を扱った作品です。

ヤマノ自動車のレーサーだった主人公「鶴田敏夫」が父をだまし、死に追いやった悪徳金融業者「山脇」に復讐する物語を縦軸とし、暴力事件で二輪レーサーとして生きていく道を滑り落ちた敏夫が四輪レーサーとして復活する華麗なストーリーを横軸とする物語です。

オープニングは平井和正の「ゾンビーハンター」によく似ています。(主人公の名前も俊夫で同じ読み、大藪春彦へのオマージュなのかな?)

「血まみれの野獣」は「汚れた英雄」や「アスファルトの虎」と同じカテゴリーに分類されると思います。

しかし、大藪作品でみられる細部を描写するねちっこさはありません。
数行で場面が展開してしまうような描写も多数をしめます。
かなりデフォルメされた感じです。

1冊の小説としてはストーリーを詰め込みすぎている印象を受けました。

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三億円事件との関連

「血まみれの野獣」が三億円事件のモデルとなったと言われますが、これが真実とは私にはとうてい思えません。

共通するのは警官に偽装した手口と陽動に爆発物を使った点くらいです。
以下、比較して見ます。

「血まみれの野獣」

  • 東京競馬場のダービー売上金を強奪
  • 場内に爆薬を仕掛け実際に爆破
  • 偽装パトカーを使用
  • 現金輸送車と護衛のパトカーはシュマイザーで蜂の巣
  • 偽装パトカーで6億円強奪
  • 用意していた改造トラックに偽装パトカーを乗せ逃走

「三億円強奪事件」

  • 東京芝浦電気(東芝)従業員のボーナスを強奪
  • 数日前から日本信託銀行の支店長宅爆破を予告
  • 偽装白バイを使用
  • 現金輸送車にもダイナマイトが仕掛けられていると偽り現金輸送車に搭乗していた行員を避難させる
  • 約3億円を輸送車毎強奪(白バイはその場に乗り捨て)
  • 用意していた複数の盗難車を乗り捨て逃走

三億円事件の特徴は複数の逃走車を用意して、乗り継ぎながら逃走した点でしょう。
今では当たり前の様なこの逃走劇は当時ではみられなかったようです。

偽装した白バイの使い方も全く違います。

「血まみれの野獣」が三億円事件と結びつけられたのは、当時まさに「ボウイズライフ」に連載されていたというタイミングにすぎなかったのではないかと思います。

終わりに

いずれにしても大藪春彦はこの三億円事件によって事情聴取を迫られました。

それによって強く三億円事件を意識したはずです。

大藪春彦は、晩年の作品「野獣は、死なず(伊達邦彦シリーズ最終巻)」に三億円事件の実行犯を登場させています。

そのキャラクターは「栗城大和」。わずか十三歳で三億円事件に参加した経歴を持っています。

三億円事件は単独犯説と複数犯説に分かれますが、大藪春彦は複数犯説だったんですね。

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