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眉村卓の「不定期エスパー」全8巻を一気読み!

私が第1巻を手に取りながらも最終巻まで読み切れなかった、(悔しい)作品が眉村卓の「不定期エスパー」です。

トクマ・ノベルズの第1巻は1988年7月31日、最終巻の第8巻は1990年2月28日に発行されています。

第8巻のあとがきによると、執筆は1981年9月に開始されています。

30年以上前の作品ということになります。

しかし、今読んでも読み応えが凄かった。

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主人公イシター・ロウが世の中に翻弄される物語

不定期エスパー〈1〉エレスコブ家・護衛員 (トクマ・ノベルズ)

不定期エスパー〈1〉エレスコブ家・護衛員 (トクマ・ノベルズ) image by Amazon

 

タイトルや装丁から類推すると、通常であれば星間国家の確執、戦争といった状況の中で活躍する超能力ヒーローを描く小説を想像してしまいます。

たしかに、異種文明が存在する宇宙の一国家、連邦国家が舞台となっています。

しかし、「不定期エスパー」一般的なスペース・オペラ、超能力ものとは大きくことなります。

……

「不定期エスパー」では、イシター・ロウの語りによる主観的な見方によって物語が展開していきます。(一人称小説)

そのため、大局的に小説世界で起こりつつある状況を俯瞰することが出来ません。

イシター・ロウが知り得る事実、彼の成長によって、徐々に世界が紐解かれていくという面白い趣向が施されています。

状況的には以下の様な流れ(かなり割愛)。

  • エレン・エレスコブとの出会い
  • エレスコブ家の護衛員としての生活のはじまり
  • シェーラとの出会い
  • ミスナー・ケイとの出会い
  • エレスコブ家からの追放
  • カイヤツ軍団での生活
  • ネプトーダ連邦とウス、ボートリュート連合との戦争
  • 部隊からはぐれての放浪
  • 敗戦によるカイヤツ軍団の形骸化
  • エレンの救出

これらがイシター・ロウの主観として語られていくので、エレンがどういう活動を行っているのか、なぜ戦争となっているのかは、よく分かりませんでした。

常にイシター・ロウは周りの状況に翻弄され続けているのです。

しかも、持っているエスパー能力は自分の思い通りになることはありません。(不定期エスパー:時折、不意にエスパー体質になる)

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ストーリーは二人の謎の女性によって引っ張られていく

そのような翻弄されるヒーローでも、「不定期エスパー」が読む者を吸引するのは、序盤に登場する二人のミステリアスな女性によるところが大きいです。

1巻で登場し、そのままイシター・ロウの前から消えてしまう女性・シェーラの謎、ミスナー・ケイの超能力の謎、が物語の後半になるまで(第7巻)明かされません。

私の場合は、その謎を知りたいが故に読書のスピードが衰えませんでした。

この二人の女性キャラクターの配置が秀逸な作品なのです。

SF的背景としてはハインラインの「宇宙の戦士」を思わせるところもあります。
しかし、作品の主たる魅力ではありません。

この二人の女性がいなければこの作品は成り立たないでしょう。
(エレン・エレスコブを入れれば、三人)

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エスパーがネガティブに描かれるのも、この作品の特徴

エスパー能力を持っていなければ、イシター・ロウはエレスコブ家から追放されることはありませんでした。

エスパーが嫌悪される社会にあって、「エスパーとは何なのか」「何が可能なのか」イシター・ロウは考察を深めていきます。

イシター・ロウのエスパー能力は苦悩の原因だったとも思えるのです。

最後はシェーラによってエスパーとして生きる道を示されることになるのですが。

……

以上の様に「不定期エスパー」は単純なヒーローものではありません。
主人公の成長や異種文明やエスパーの考察がよいのです。

もちろん、随所にアクションもあります。
エレン救出の苦悩に満ちた戦いは名場面です。(最終巻のこのシーンは作品全編を総括している)

久しぶりに仕事も忘れて読んだ面白い作品でした。

……

このページでは作品の面白さは何十分の一、何百分の一も表現出来てません。

こんなに面白い小説が古本でしか手に入らない現状は間違ってます。

 


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